開咬の原因
奥歯が噛み合っているのに、上下の前歯に隙間がある状態です。これは、指しゃぶりや爪噛み、口呼吸などの悪習慣が主な原因となって起こっています。また口鼻など耳鼻咽喉科領域の病気がある場合に生じるケースもあります。
開咬が身体へ悪い影響を及ぼす！？
- 発音しづらい
- 口腔の乾燥、口呼吸、唾液の減少、虫歯・歯周病リスク上昇
- 咀嚼能力の不十分、及び消化不良
- 奥歯への負担の増加
- 咬み合わせの乱れによる顎関節症のリスク上昇
開咬のリスク
いつも口を開けてぽかんとしているという見た目の問題のほかに、ものを噛む音が漏れやすく、クチャクチャ音を立てながら食べている場合がよくあります。本人やご家族が気付かないこともありますので、ご注意ください。発音の不明瞭が起こりやすく、サ行、タ行、ラ行が苦手なことがよくあります。手入れのしにくさや乾燥から、虫歯や歯周病、口臭などのリスクが上がります。また、咀嚼力が低下するため胃腸への負担をかけることになります。前歯や口元をけがしやすく、顎関節症や肩こり、頭痛などを起こす原因になる場合もあります。鼻の病気によって起こっている場合は、耳鼻咽喉科の治療も重要です。
開咬の矯正
お子さまの場合、指しゃぶりなどの悪習慣が原因になっている場合がほとんどですから、そうした癖をなくしながら、取り外しできる装置を使って矯正していきます。また、鼻など耳鼻咽喉科領域の病気が原因になっている可能性もありますので、疑わしい場合には専門医をご紹介しています。鼻に病気がある場合、学習や成長によくない影響が及ぶ可能性もありますので、早めに治してあげましょう。
できれば小学校入学前にご相談いただけると、より負担のない治療が可能です。また悪習慣をできるだけ早くやめることは、その後の歯並びにもよい影響を与えます。
大人の場合には、いつでも矯正治療が可能です。骨格の問題が大きい顎変形症の場合には、顎の骨を外科手術で修正する必要が生じる場合もあります。開咬の程度や動かせるスペースなどにより抜歯が必要になる場合もありますが、インプラント矯正などでできるだけ抜歯をしない矯正方法も検討していきます。目立たない矯正や舌側矯正なども可能です。
治療
マウスピース型矯正装置
（インビザライン）
透明のマウスピースを1～2週間ごとに交換し、歯の位置・傾きを改善していきます。治療期間中も装置が目立たず、快適に過ごせます。
ただし、開咬のタイプや程度によっては、ワイヤー矯正をおすすめすることがあります。
ワイヤー矯正
表側矯正
ブラケットとワイヤーを、歯の表側に取り付け、歯の位置・傾きを改善します。
ただ、骨格の問題で生じる開咬も少なくありません。その場合は、外科的な手術が必要になることがあります。
子供矯正
指しゃぶり、舌で歯を押す癖などが原因になっていることが多いため、お口周りの筋肉を鍛えるトレーニングが有効です。補助的に矯正装置を使用すると、より高い効果が期待できます。
開咬についてQ&A
開咬を放置していると、どのような問題が生じるのでしょうか？
上の前歯、下の前歯が咬み合わず、食べ物を食べるときの「噛み切る」動作ができません。そのため、食べ物をよく噛まずに飲み込んでしまうということが起こり、これは消化不良につながります。
また、前歯の機能が低下する分、奥歯への負担が増大します。本来であれば分散されるはずの負担が奥歯にばかりかかることで、奥歯の寿命が短くなることが懸念されます。
比較的見た目を気にする方が少ない一方で、お口の健康を考えたときに、開咬はもっとも治療の必要性の高い歯並びの乱れの1つと言えます。
開咬の治療は、ワイヤー矯正とマウスピース矯正、どちらが適していますか？
他の歯並びの乱れと比べると、開咬は治療が困難になることが多くなります。そのため、万能型であるワイヤー矯正をおすすめすることが多くなります。
ただ、開咬のタイプや程度にもよっては、マウスピース矯正が可能なケースもあります。まずは一度、ご相談ください。
外科的な手術が必要になることはありますか？
骨格に大きな問題がある場合には、外科的な手術の併用が必要になることもあります。
こちらも症例によって異なりますので、まずは一度ご相談ください。
抜歯が必要になることはありますか？
開咬は、前歯の噛み切る機能が低下・失われている状態です。抜歯せずに治療するのが理想ではありますが、抜歯してでも前歯を正しく機能させるメリットを優先し、抜歯が行われることがあります。
もちろん、その判断は患者様と十分にご相談させていただいた上で行いますので、ご安心ください。抜歯した場合と非抜歯の場合、それぞれのメリットとデメリットを丁寧に説明いたします。
開咬とは、どのような噛み合わせの状態ですか？
奥歯をしっかり噛み合わせたときに、上下の前歯の間に隙間があき、歯が当たらない状態を開咬といいます。前歯だけが噛み合わない「前歯部開咬」のほか、奥歯側に隙間が残る「臼歯部開咬」もあります。
開咬の主な原因にはどのようなものがありますか？
指しゃぶり、舌で前歯を押す癖（舌突出癖）、長期間の哺乳瓶・おしゃぶり使用、口呼吸、骨格のアンバランス（上下顎の垂直的なズレ）などが原因となります。複数の要因が重なっていることもよくあります。
舌の癖（舌突出癖）は開咬と関係がありますか？
大きく関係します。飲み込むときや話すときに舌が前歯の間から出る癖があると、前歯が前方・上下に押され続け、開咬が助長されることがあります。
指しゃぶりは何歳頃まで続くと開咬のリスクになりますか？
3歳頃までは自然にやめられれば大きな問題にならないこともありますが、4～5歳を過ぎても続いている場合、開咬などの不正咬合につながるリスクが高くなります。
子どもの開咬は自然に治ることがありますか？
原因となる癖が早期に改善されれば、成長とともにある程度回復することもあります。しかし、骨格的な要因が強い場合や、癖が続いている場合には自然に治らないことが多く、専門的な治療が必要です。
何歳頃から開咬の相談をしたらよいですか？
永久歯が生え始める6〜7歳頃からチェックするのがおすすめです。癖や顎の成長をコントロールしやすい時期に介入することで、重症化を防げる可能性が高まります。
成人してからでも開咬は治療できますか？
はい、成人の方でも治療可能です。ただし、顎の成長が完了しているため、骨格的なズレが大きい場合は、矯正単独ではなく外科的矯正が必要になることがあります。
開咬だと発音に影響はありますか？
上下の前歯の隙間から息が漏れやすくなるため、「サ行」「タ行」「ラ行」などが不明瞭になったり、舌足らずな印象になることがあります。
開咬と口呼吸には関係がありますか？
関係があります。口呼吸が続くと舌の位置が低くなり、上下の前歯の間に舌が入りやすくなるため、開咬の一因となることがあります。
開咬は見た目にも影響しますか？
影響します。口を閉じたときに前歯が見えやすい、前歯の隙間から舌が見える、口元のバランスが崩れるなど、顔貌にも影響することがあります。
開咬の矯正治療にはどれくらいの期間がかかりますか？
開咬は他の歯並びに比べて難易度が高く、全体矯正の場合1年半～2年以上かかることもあります。年齢や症例の程度によって大きく異なります。
部分矯正だけで開咬を治すことはできますか？
軽度の開咬で、奥歯の噛み合わせに大きな問題がない場合には、部分矯正で改善できるケースもあります。ただし、多くは全体の咬み合わせを整える必要があります。
開咬の治療では、舌のトレーニングも必要ですか？
舌突出癖や口呼吸がある場合、矯正装置だけでなく、舌の位置や飲み込み方を改善する「口腔筋機能療法（MFT）」がとても重要です。癖をそのままにすると後戻りの原因になります。
開咬を治療すると、奥歯の負担は軽くなりますか？
はい、前歯が正常に噛み合うようになることで、咬合力が前歯・奥歯にバランスよく分散され、奥歯への過度な負担を減らすことが期待できます。
開咬と睡眠時無呼吸症候群には関係がありますか？
開咬そのものが直接の原因というわけではありませんが、口呼吸や舌の位置異常など、共通する背景を持つことがあります。いびきや睡眠の質が気になる場合は、併せて相談すると安心です。
開咬は遺伝しますか？
顎の骨格や顔の骨のバランスには遺伝的な要素があり、家族に開咬や顔面の縦方向の長さが強い方がいると、似た傾向が出ることがあります。
開咬の治療中、食事や生活に制限はありますか？
矯正装置の種類によって、硬いものや粘着性の高い食品を控えていただく必要があります。マウスピース矯正の場合は、食事の際に装置を外せるため、比較的普段通りの食生活が可能です。
開咬は後戻りしやすいと聞きましたが、本当ですか？
はい、癖（舌突出・口呼吸など）が残っていると後戻りしやすい不正咬合のひとつです。治療後のリテーナー使用に加え、原因となる習癖の改善がとても大切です。
子どもの開咬はどのような装置で治療しますか？
上顎を広げる装置、舌の動きを制御する装置、マイオブレースなどの筋機能装置など、年齢や状態に応じた装置を選択します。成長を利用して噛み合わせを整えていきます。
開咬かどうか、自分で簡単にチェックする方法はありますか？
奥歯をしっかり噛んだ状態で鏡を見たとき、上下の前歯の間に隙間があり、歯どうしが全く当たっていない場合は開咬の可能性があります。気になる場合は一度、歯科医院で専門的な評価を受けてください。
